高齢化に伴い、お年寄りのドライバーによる交通事故が多発しています。最近では一週間に一度はそういったニュースを目にする気がします。
もし、高齢になった自分の親が事故を起こしてしまった場合、自分や家族の誰かが責任を取らなくてはいけない場合はあるのでしょうか。
加害者本人の責任は?
物損事故だけならまだマシですがもし他人を巻き込む人身事故になった場合は最悪です。
もし死亡事故を起こしてしまった場合、
- 刑事責任:過失運転致死罪(7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金)
- 民事責任:被害者への損害賠償(2,000万円を超える場合も)
- 行政責任:免許取り消し
と、かなりの重圧がのしかかります。それ以外にも罪の意識に苛まれ続けたり周囲の人が離れていくなどの目に見えない負担も相当大きなものになります。
家族の責任は?
家族にも責任が追及されるかどうかですが「このままでは事故を起こすかもしれない」と思ってはいたがそのまま放ったらかして事故が起こった場合にその責任が問われる可能性もあります。
いわゆる「監督責任」です(民法714条)。
事故を起こした本人が認知症などで責任能力が無いと認められた場合、被害者は「事故を起こした本人」ではなく「その監督義務者」に損害賠償を請求できます。
自分が「監督義務者」に該当するかどうかは判断が難しいところですが、過去の判例を見る限りでは同居している場合に監督義務者として認められる可能性が高いと言えます。
もし監督義務者として認められた場合は、被害者への賠償責任を加害者に代わって果たす義務が生じます。
必ずそうなるというわけではありませんが、もし一度でも親の運転に恐怖を感じた事があるならそのリスクは常に意識しておくべきでしょう。
保険は適用される?
自動車保険には強制加入の自賠責保険(法律で義務付けられています)と強制ではない任意保険の2種類があります。
自賠責保険は被害者の補償のための保険ですから自賠責からは保険金は出ます。
ただし自賠責には上限があり、被害者が死亡した場合は一人につき3,000万円まで、介護を要する重度の後遺障害は4,000万円までとなっています。
また、物損に対しての補償はされません。
一方、任意保険は各保険会社や加入プランにより補償額は様々です。
任意保険の場合は対応が保険会社により様々です。
被害者への補償(人および物どちらも)は対人・対物補償から保険金が出ます。慰謝料も含まれます。
それ以外の部分(加害者の車・加害者の同乗者や家族など)に対してはケースバイケースです。
加入している保険プランによりけりですが、運転者が認知症と判断された場合、こちら側の損害については保険金が支払われない場合も。
詳しくはお手持ちの約款に記載されています。ですが約款を読むのはなかなかの手間なので契約している保険会社の担当者に一度訪ねてみると良いでしょう。
もしも運転手(例えばあなたの父親)が事故を起こして認知症と認められた場合、あなたにも賠償責任が発生することがあります。
その場合はあなた自身がそれを補償できる保険に入っている必要があります(個人賠償責任保険など)。ご自分の保険内容も一度チェックしてみましょう。
まさか任意保険に加入していないという方はいないと思いますが、未加入の方はできるだけ早く任意保険への加入をおすすめします。
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どうやって防ぐ?
高齢者に運転を控えてもらうよう説得するのはとても難しいです。
車がなくては生活が成り立たない地域に住んでる人もいるでしょうし、何より本人がそれを望んでいない場合がほとんどです。
ですが高齢者に多いのは「自分への過信」です。自分はまだ大丈夫、運転には自信があると思っている人が大半でしょう。
一度ドライブレコーダーを設置して、録画した自分の運転を客観的に見てもらって納得してもらうのも良いでしょう。
もし親が認知症の場合は車を動かなくするか処分するしかありません。認知症が進行すると仮に免許を返納または取消しになってもそれすら忘れてしまう事があるので…。
まとめ(で、どうなる?)
高齢の親が事故を起こした場合、家族に責任があるかどうかですが
- 加害者に責任能力があるかどうかの判定
- 加害者に責任能力が無いと認められた場合、家族に監督責任がないかの判定
- 監督責任があると認められた場合、加害者に代わって被害者への賠償責任(民事責任)
このような流れになります。
誰かを死亡させる事故だった場合は、ほぼ間違いなく全国ネットで報道されるでしょう。その時名前が出なければまだラッキーな方で、逮捕され実名報道されるという流れがほとんどです。その時にはだいたい加害者の関係者にマスコミが取材に行くことでしょう。「家族は事故を起こす可能性に気付いていたのでは?」という報道がされます。まず外を歩けなくなりますね。
そして、もし家族に責任が無かったという結論になったとしても悲惨な人生が待っています。ネットの発達した昨今では加害者の実名が出るとあっという間にその家族の情報が拡散されて誹謗中傷を受ける事もあります。また、暴走した人によって全く無関係の人が「こいつも関係者だ!」と勝手に実名で晒されて全く見に覚えのない被害を受けることも。
家だけでなく職場や学校にまで嫌がらせの電話がかかってきて最終的に一家離散という事態にも。
そうならないためにも家族全体で将来の事まで見据えた話し合いをしなければいけない時期かもしれませんね。